東京都葛飾区の事業系ゴミ(産業廃棄物)の捨て方・条例・ルール・罰則を解説します
葛飾区には、東京都23区の中では大田区や墨田区に次いで製造業者が多い地域として知られています。平成28年のデータによると692軒の工場のうち163軒が金属製品製造業に従事していますが、これは葛飾区の工場の中でもトップの数字です。
しかし、大工場は相次いで区外に移転が行われており、現在葛飾区に存在するのは中小の町工場がほとんどです。工場は京成電鉄青砥駅の周辺や荒川・中川の流域沿いに数多く存在していますが、他の地域にもいくつかの工場が点在しており、区内全域に満遍なく工場が散らばっていると言えるでしょう。金属製品加工業の他にも、ゴムや樹脂の加工業、玩具や日用品を扱う工場なども存在します。
葛飾区に限らず、都市計画では用途地域と呼ばれる区画が定められ、住宅ならば住居地域、商業施設は商業地域と、地域ごとに建てられる施設がある程度決まっています。このうち、工業に関連する用途地域が「工業地域」と「準工業地域」です。
準工業地域は、周辺環境の悪化の恐れがない軽工業における利便性を最も重視したエリアのことを指し示す言葉です。住宅や店舗、学校や病院などと隣接して、危険のない工場や倉庫なども立ち並びます。
工業地域は、工業における利便性を最も重視したエリアのことを指し示す言葉です。大規模な施設を含めたあらゆる工業用地として活用される可能性があり、住宅や小規模店舗はあっても、学校や病院、宿泊施設などの建設物はありません。
葛飾区は、用途地域の総面積3025ヘクタールのうち、工業地域が238.7ヘクタール、準工業地域が750.6ヘクタールと、両者を合計すると実に1/3近い割合を占めているのが特徴です。白鳥や南四ツ屋といった工業地域は葛飾区の中でも金属製品の工場が多く集中しており、金属加工の際に発生した鉄屑や金属片などの産業廃棄物が多く排出されます。
また、準工業地域として定められている青砥駅周辺や堀切といった地区は、ゴム加工やプラスチック加工などの軽工業に従事する工場が多く、主に廃プラスチック類などの産業廃棄物が排出されることが多いです。
葛飾区は帝釈天で有名な柴又や、漫画の舞台になった亀有など、観光スポットも数多く存在します。また、区内の大型工場の跡地は順次再開発が行われ、亀有にショッピングモールを建設して商業面を強化する、新宿(にいじゅく)に東京理科大学のキャンパスを設置して文教地区としてのイメージアップを行いつつ、産学連携の強化を図るなどの試みが進められています。
葛飾区では、家庭ごみと事業ごみで分別方法が異なります。
家庭ごみの場合は資源、プラスチック製容器包装、可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみの5つに区分されます。
粗大ごみ以外のごみについては、それぞれ定められた曜日に集積場へ朝8時までに出すことが求められます。粗大ごみは事前に申し込みを行った上で戸外に出して回収してもらうか、区内に2箇所存在する粗大ごみ持ち込みステーションに持ち込んで処理してもらいます。
一方、事業ごみは大別して事業系一般廃棄物と産業廃棄物の2種類に分けられます。このうち、「燃え殻」「汚泥」「廃油」「廃酸」「廃アルカリ」「廃プラスチック類」の6種類と、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」で定められた「ゴムくず」「金属くず」「ガラスくず」等14種類の計20種類の廃棄物が産業廃棄物として分類されています。産業廃棄物は都道府県の認可を受けた産業廃棄物処理業者に有料で回収を依頼することになります。
これらに該当しないごみは全て事業系一般廃棄物として分類されます。事業系一般廃棄物は、葛飾区長から許可を受けた一般廃棄物処理業者に委託をする、もしくは処理施設(清掃工場など)の受け入れ基準等のルールに従って自ら持ち込む、という2通りの方法で処理を行う必要があります。いずれにせよ、一般廃棄物は家庭ごみと同様の区分で分別を行い、処理しなければなりません。
マニフェスト(manifesto)は、個人や団体が方針や意図を公に発信するための文書や演説のことを言い、産業廃棄物のマニフェストは、排出事業者が産業廃棄物の処理を産廃業者に委託するにあたり、委託契約内容に基づき適正に処理されていることを確認するために必要な事項を記載し交付される伝票のことを指しています。排出事業者とはごみを出す法人のことを言い、東京23区については産業廃棄物はもちろんのこと、事業系一般廃棄物についても日量100キログラム以上排出する事業者もしくは臨時で排出する事業者はマニフェストの作成が義務付けられています。
産業廃棄物を業者に委託して処理する際には、このマニフェストをきちんと作成し、処理業者に提出しましょう。また、処理業者はマニフェストに記載されたごみの処理が完了した後、完了日時をマニフェストに記載して排出事業者に返送しなければなりません。きちんとマニフェストが返送され、いつ処理が完了したかについても、しっかりと確認を行うことが大事です。
葛飾区における産業廃棄物は、種類ごとに料金が定められています。
以下に、葛飾区を対応エリアとする産業廃棄物回収業者から5社をピックアップし、混合廃棄物を例に回収料金の比較を行いました。
なお、ここに掲載したのは全て税抜き価格です。
混合廃棄物(ボードを含む)回収料金
A社:19,500円/立方メートル
B社:12,000円/立方メートル
C社:9,000円~11,000円/立方メートル
D社:30,000円/立方メートル
E社:30,000円/立方メートル
これらはあくまで目安であり、ごみの状況によって変動することがあることに注意してください。
運搬費・出張費
産業廃棄物の回収の際には別途運搬費や出張費がかかります。上記同様に、5社の比較を行いました。
A社:15,000円/台(4t,8tコンテナ車共通)
B社:10,000円(出張費扱い)
C社:18,000円/台(4tコンテナ車)
D社:18,000円/台(4tコンテナ車)
E社:18,000円/台(4tコンテナ車)
もちろん、自分で持ち込みを行う場合は上記の運搬費はかかりません。また、運搬の際に高所から運び出すなどの追加作業が行われる場合は、別途追加作業費がかかる場合があります。
葛飾区では、ごみ減量のための様々な取り組みが行われています。例えば、ごみの発生抑制や物品の再使用、資源の再利用の推進が呼びかけられており、そのキーワードとして挙げられているのがReduce、Reuse、Recycleの3つの「R」です。3R推進のためのマスコットキャラクター「りー(Ree)ちゃん」も誕生し、SNS上や区内のイベント等でりーちゃんを活かしたキャンペーン活動を展開しています。
また、エコライフや3Rの考え方を学ぶために設置された施設が「かつしかエコライフプラザ」です。エコライフや3Rに関する学習や実践を行うべく、幅広い年齢層を対象にした学習会や講座、イベントを実施しています。
これらの取り組みは、SDGsの中で定められた目標のうち、11番目の「つくる責任、つかう責任」という目標を達成するために行われています。
SDGsとはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)を省略した言葉で、2015年9月の国連サミットで国連加盟193か国が、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標を指しています。
SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に対する取り組みとして、日本でも産業廃棄物の排出に伴う適切な処理についてルールが整備されています。「つくる責任、つかう責任」にはターゲットと呼ばれる、11の更に具体的な目標が掲げられており、そこには具体的に以下のような内容が示されています。
11のターゲットの例:
・2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
・2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。