ゴミのリサイクル・SDGs・3R活動・循環型社会に向けた取り組みについて
現代社会ではリサイクルの概念が広く浸透しており、ごみとして捨てられるものの多くが処分の過程で再利用されています。それでは、事業所から排出される産業廃棄物はリサイクルされているのでしょうか。また、リサイクルされるとすれば、どのようなステップでどのようなものに生まれ変わっているのでしょうか。
本記事では、産業廃棄物とリサイクルの関係について詳しく紹介します。
まずは産業廃棄物がどのようにリサイクルされるのか主な流れを見ていきましょう。
事業ごみなどで各事業所から排出された産業廃棄物は、収集運搬の許可を取得している運搬業者によって、処理工場まで運搬されます。そしてそこからさらに中間処理施設へ運ばれます。中間処理施設とは、最終処分に向けての処理を行う施設のことです。具体的には廃棄物の選別などを行います。
中間処理施設で種類ごとに選別された産業廃棄物のうち、再利用可能なごみに関しては、それぞれリサイクルの処理が行われます。破砕処理など加工をし原材料として再利用するマテリアルリサイクル、化学反応を使って再利用するケミカルリサイクルがあります。
また、素材としてリサイクル不可能なものに関しても、焼却し熱エネルギーを取り出し利用するサーマルリサイクルができます。このように、さまざまな方法によって産業廃棄物のリサイクルが行われているのです。
それでも、リサイクル不可能な廃棄物に関しては最終処分として埋め立てがなされます。環境省が発表している「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和元年度速報値(概要版)」によると、令和元年度における産業廃棄物の総排出量は約379,353千トンで、このうち、全体の79%にあたる約299,982千トンが中間処理されました。中間処理によって再利用可能となった約124,846千トンと直接再利用が可能な約75,532千トンを合わせて、産業廃棄物全体の約53%がリサイクルされています。
先に述べた通り、産業廃棄物は処理の過程で選別され、素材ごとにリサイクルが行われます。
例えば金属くずは精錬によってくずの中から純度の高い金属を取り出すという方法でリサイクルされます。木くずは破砕処理が施され、原材料やマテリアル用、燃料などとして再利用が行われています。さまざまな用途でのリサイクルが可能な点は木くずの特徴です。
廃油は油の種類や使用状況などによりリサイクルの仕方が変わります。エンジンオイルなど鉱物系の廃油は、水分・混合物などを取り去り、再生重油として再利用されています。また、添削油やギヤオイルなどは、劣化成分などを除去すれば潤滑油になります。
食用油はバイオディーゼル・石鹸の原料などに加工しリサイクルする方法もあります。薬品を使用し成分の抽出や分離を行い、適した形に変化させるのです。汚泥は脱水・乾燥や成分の調整などを施され、建築資材や燃料にリサイクルされています。
また、私たちにとって非常に身近な商品であるペットボトルもリサイクルの対象となる廃棄物です。細かく破砕され、ケミカルマテリアルとして被服や布小物、カーペットといった繊維製品などに生まれ変わります。また、再度ペットボトルとして加工されるものもあります。家電製品は金属・プラスティック・ガラス・オイルなどさまざまな素材に選別され、素材ごとにリサイクルされます。
国が産業廃棄物のリサイクルに対し行っている取り組みとして大きなものは、関連する法制度の整備です。
日本において廃棄物のリサイクルに対し本格的な取り組みが行われ始めたのは1992年のこと。リオデジャネイロで行われた地球サミットで、資源は有限であるという認識が各国に広まり、日本でもこれをきっかけに資源の有効活用やリサイクルの重要性に大きな注目が集まり始めました。
1993年に制定された「環境基本法」では、事業者に対し、事業で排出された廃棄物の適正な処理や再生利用に努めることを責務とする旨が定められています。
そしてその後も1995年の「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)」、1998年の「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」など、廃棄物のリサイクルに関連する法律が次々に制定されました。
さらに、2000年度は「循環型社会元年」として、「循環型社会形成基本法(循環基本法)」、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」など複数の環境関連法が制定され、より多種類の廃棄物に関するルールが具体化・厳格化されることとなりました。
また、環境省においてはこうした法律などをベースに、環境基本計画を策定し、廃棄物の適正なリサイクルに関して推進していく方針を示しています。
産業廃棄物のリサイクルに関してはさまざまな法律が制定され、処理方法についても具体的に整備されたため、多くの廃棄物はそのまま最終処分されるのではなく、再利用に回されるようになりました。
しかし、産業廃棄物の排出量自体は平成初頭以降、各年によって多少の増減はあるものの、ほぼ4億トン前後を横ばいにしている状態です。
産業廃棄物をリサイクルする仕組みが整っているとはいえ、廃棄物の量が減少しないのであれば、根本的なごみ問題の解決には至りません。リサイクルできない廃棄物は埋め立て処分することになるため、埋立地の確保という問題にも繋がります。産業廃棄物のリサイクルに努めるとともに、産業廃棄物の排出自体を削減するための取り組みにも注力していかなければならないでしょう。
また、産業廃棄物は熱エネルギーとして利用できますが、現在の処理施設では有効活用しきれていない現状もあります。エネルギー供給に関してはさまざまな議論がなされる現代において、こうしたエネルギーをより高度な技術で余すことなく活用することも今後の課題と言えるでしょう。
なお、リサイクルの仕組みは整っているものの、リサイクルに協力的な事業者に対するメリットが少ない状態にも目を向けるべきでしょう。リサイクルをさらに推進していくためには、リサイクルに積極的に取り組む事業者を評価するような仕組みづくりも行っていく必要があります。
さらに、産業廃棄物をリサイクルして作られたリユース品に関し、より多くの消費者に購入されるよう、商品の品質保証を行うなど力をいれていくことも大切です。