事業系ゴミや産業廃棄物の法令・条例の基本ルールと罰則について
事業を行っていくうえで知っておいたほうがいい法律の一つとして、廃棄物処理法があり、この法律では廃棄物処理に関するルールや罰則などが規定されています。今回は、廃棄物処理法の内容と違反した場合の罰則について、事業者に関係してくるところを説明していきます。
廃棄物処理法(以下、廃掃法)は、正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といい、当時の清掃法を全面的に改正・廃止する形で昭和45年(1970年)12月25日に公布されました。現在適用されているものは、令和4年(2022年)6月17日に改正されたものです。
内容としては、法律の目的、廃棄物の定義、処理・保管の方法、責任の所在、罰則などがまとめられています。なお、廃棄物の処理に関して問題が起こればその都度改正が行われていますので、今後も改正される可能性が高いです。
廃掃法の目的は、「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること(廃掃法第1条)」であると定められています。
要するに、廃棄物の排出を抑制しつつ、リサイクルなど排出された廃棄物に対し適切な処理を行うことで、人々の生活環境を守るために作られました。
なぜこのような法律が必要になったのでしょうか。高度経済成長によって大量生産、大量消費が進んだことで、処理しなければならない廃棄物が増加しました。
しかし、既存の処分場ではこれらすべてを処理できるキャパシティを持ち合わせておらず、また処理価格の高騰により、適切に処理せず不法投棄を実施する業者も多くみられるようになりました。
このような業者を増やさないために、廃棄物の種類やそれに応じた処理方法を定める必要がありました。
廃掃法において廃棄物とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)」(廃掃法第2条1項)とされており、廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に大別されます。
一般廃棄物とは、産業廃棄物で指定されている以外の廃棄物のことを指し(廃掃法第2条2項)、この中で「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」は特別管理一般廃棄物と呼ばれます(廃掃法第2条3項)。
産業廃棄物とは、「事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物(廃掃法第2条4項1号)」や、「輸入された廃棄物(前号に掲げる廃棄物、船舶及び航空機の航行に伴い生ずる廃棄物並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物(廃掃法第2条4項2号)」のことであると規定されています。
この中で「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの(廃掃法第2条5項」は特別管理産業廃棄物となります。
事業者が自ら産業廃棄物の運搬・処分を行う場合は「産業廃棄物処理基準」に従って処理を行い(廃掃法12条1項、廃掃法施行令6条)、運搬されるまでの間は「産業廃棄物保管基準」に従って、生活環境の保全に支障のないように保管しなければなりません(廃掃法12条2項、廃掃法施行規則8条)。
処分に関しては、悪臭や騒音、振動など周囲の生活環境に支障がでないようにすることなどが規定され、保管に関しては、保管場所の周囲に囲いを設けるなどが規定されています。
特別管理産業廃棄物の処理・保管に関しては別途「特別管理産業廃棄物処理基準」と「特別管理産業廃棄物保管基準」が定められており(廃掃法12条の2第1項・第2項)、特別管理産業廃棄物処理基準については廃掃法施行令6条の5、特別管理産業廃棄物保管基準については廃掃法施行規則8条の13でそれぞれ規定されています。
産業廃棄物を自ら運搬・処分するのは稀であり、一般的には専門の業者に委託することになります。この場合、産業廃棄物の場合には廃掃法12条6項、廃掃法施行令6条の2、特別管理産業廃棄物の場合には、廃掃法12条の2第6項、廃掃法施行令6条の6の規定にしたがって委託を行わなければなりません。
また、委託する業者を選定する際は、事業者は各都道府県知事の許可を得た産業廃棄物収集運搬業者や産業廃棄物処分業者に委託しなければなりません(廃掃法12条5項/廃掃法施行規則8条の3、廃掃法14条1項・6項)。特別管理産業廃棄物については、廃掃法12条の2第5項、廃掃法施行規則8条の14・8条の15で、委託先がさらに限定されます。
事業者は、事業活動により排出した産業廃棄物を自ら処理しなければなりません(廃掃法11条1項、汚染者負担の原則)
自身で処理できない場合には、その処理を他の業者に委託することができますが、委託する際には前述の「委託基準」にしたがって産業廃棄物委託契約を書面で取り交わさなければならず、また委託した産業廃棄物の処理状況を、マニフェストを通して管理する必要があります。
さらにマニフェスト交付等の状況について、年に1度各都道府県知事等に報告することが義務付けられています。
2017年の改正(2020年施行)で、前々事業年度において、年間50トン以上の産業廃棄物を排出する事業者に対して、電子マニフェストの使用が義務化されました(廃掃法12条の5)。
これにより、事業者自身及び行政が産業廃棄物の処理過程を容易に把握できるようになり、不法投棄などの不適切な処理を未然に防ぐことができるようになりました。
上述の規定に違反すると、行政指導や行政処分、刑事処分といった罰則があります。
罰則の内容は、違反内容により異なりますが、一番重い刑事罰では「5年以下の懲役または1000万円以下の罰金」(廃掃法第25条)、軽微なものの場合には「10万円以下の過料」(廃掃法第34条)となります。
その他、行政指導として、口頭指導や改善命令、措置命令、事業停止、許可取り消しなどの措置が取られることになります。違反がないように、きちんと確認したうえで事業を継続してください。
今回は、廃棄物処理法について説明しました。詳細な内容には触れていませんが、具体的な内容まで定められているところがありますので、きちんと確認するようにしましょう。