事業系ゴミや産業廃棄物の法令・条例の基本ルールと罰則について
危険物が含まれる産業廃棄物を取り扱うためには、特別な資格を習得する必要があります。
無許可の業者に委託すると、依頼側の排出者にも懲役刑や罰金を科せられてしまうので注意しましょう。
では、事業で産業廃棄物を取り扱う際には、どのような資格が必要になるのでしょうか。
ここからは、産業廃棄物にまつわる資格について詳しく解説していきます。
産業廃棄物は事業活動で発生するごみで、一般廃棄処理施設では処理できないもののことを指します。
燃え殻や廃油、廃プラスチック類など20種類が産業廃棄物として定められています。
日本では廃棄物処理法が制定されており、産業廃棄物は都道府県から許可を得る必要があります。許可を得た産業廃棄物処理業者が回収や処理を行い、厳格なルールに基づいて適切な方法で廃棄しなければいけません。
また、産業廃棄物の種類によって取扱方法が変わることから、資格は複数存在します。基本的に産業廃棄物は各都道府県で管理されていますが、特に危険度が高いものに関しては国家資格の取得が求められます。
産業廃棄物に関する資格は、「国家資格」と「都道府県知事免許」に分かれています。
合計で6種類の資格があり、産業廃棄物を取り扱うにはこれらの資格を取得する必要があります。ここからは、産業廃棄物に関する資格について詳しく見ていきましょう。
国家資格の「特別管理産業廃棄物管理責任者」と「廃棄物処理施設技術管理者」
特別管理産業廃棄物管理者とは、特別管理産業廃棄物を適切に保管や処理するための資格です。
特別管理産業廃棄物は「爆発性、毒性、感染症その他人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」のことで、廃酸や廃アルカリの他、廃PCBやPCB汚染物といった特定有害産業廃棄物などがこれにあたります。通常の廃棄物より厳しい処理基準が設けられているので注意が必要です。
国家資格ではあるものの、「2年以上環境衛生指導員の職にあった者」などの選任要件を満たしていれば、講習を受講した後に資格を取得できます。
特別管理産業廃棄物管理者には、産業廃棄物の排出状況の管理、処理計画の立案、マニフェストの交付や保管などの役割があります。
一方、廃棄物処理施設技術管理者は、産業廃棄物処理施設や一般廃棄物処理施設の維持や管理を行うための資格です。
廃棄物処理施設は必ず廃棄物処理施設技術管理者を置くことが法律で義務付けられています。この資格を持っている人は、違法な処理が行われていないか現場を監督する役割があります。
産業廃棄物収集運搬業
産業廃棄物収集運搬業は、産業廃棄物の収集・運搬を行う際に必要な資格です。
法律を定められた条件をクリアした上で、産業廃棄物の積み込みや積み下ろしを行う許可を都道府県・政令都市に申請します。
この資格を取得する際は、どの都道府県に許可を申請するのか注意してください。都道府県をまたいで収集・運搬する場合、運搬で通過するだけなら問題ありません。しかし、積み込み・積み下ろしを行う都道府県が異なるなら、それぞれの都道府県で許可を得る必要があります。
産業廃棄物処分業
産業廃棄物の処分を事業として行うための資格です。
産業廃棄物の処理は「収集運搬」「中間処理」と「最終処分」の3つの工程に分けられます。
産業廃棄物処分業の許可を得ると、「中間処理」と「最終処分」の業務を行えるようになります。許可を申請するには、焼却や破砕といった必要な機能がある施設を設けることや、産業廃棄物の流出や害虫の発生を防止する措置を行うことなど、細かい規定が決められています。
あくまで産業廃棄物の処分に関する資格なので、収集・運搬も行いたい場合は別途産業廃棄物収集運搬業の許可を得なければいけません。
特別管理産業廃棄物収集運搬業
爆発性や毒性などの危険がある特別管理産業廃棄物の収集・運搬を行うために必要な資格です。
事業を始めたい場合は、都道府県知事または政令都市の市長の許可を得てください。特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を申請する際は、運搬施設を有している、講習会を受講するといった条件を満たす必要があります。
この資格は特別管理産業物のみ対象となるので、通常の産業廃棄物を取り扱いたい場合は別途資格を取得しなければいけません。
特別管理産業廃棄物処分業
特別管理産業廃棄物処分業は、特別管理産業廃棄物の処理を事業として行う際に必要な資格です。
この資格を取得すると、特別産業廃棄物を焼却などで無害にする中間処理や、埋め立てなどで最終処分を行えるようになります。特別管理産業廃棄物の処分のみ対象となるため、この資格だけでは通常の産業廃棄物は取り扱えません。
特別管理産業廃棄物の処分だけでなく、収集や運搬も行うのであれば別途許可をもらう必要があります。
なお、産業廃棄物収集運搬業・産業廃棄物処分業・特別管理産業廃棄物収集運搬業・特別管理産業廃棄物処分業の4つに関しては、有効期限が5年と決められています。許可の取得から5年が過ぎたら、必ず更新するようにしましょう。
更新を忘れたまま事業を行っていると、法律違反となるので注意が必要です。
産業廃棄物を回収してもらったからといって、業者側が全ての責任を負う訳ではありません。
産業廃棄物を処理する場合、許可を得ていない業者に委託すると排出者にも罰則が科せられるので注意が必要です。
例えば、産業廃棄物処理業の許可がない業者に委託した場合、委託基準違反となり、5年以下の懲役、1,000万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
廃棄物処理法では、「排出事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を責任もって処理しなければならない」と決められているからです。
自社で処理する場合でも産業廃棄物処理を委託する場合でも、一定のルールに従って適切に処理することが求められているのです。
費用の安さだけで選んだら、「無許可業者であることが発覚し罰金が科せられてしまった」といったトラブルが発生してしまうかもしれません。
各都道府県から許可を得ていない業者へ産業廃棄物の処分を委託すると、業者だけではなく排出者も罰を科せられるので十分注意してください。
委託先の業者を選ぶ際は、必ず許可を取得しているところに依頼するようにしましょう。