産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)の処分方法・基礎知識・処分の流れ解説
事業を展開する企業にとって、産業廃棄物処理に関わる正しい知識を身に付ける事は重要な取り組みです。
産業廃棄物の取り扱いについては処理業者だけでなく、ごみを排出する企業側にも責任が発生します。
ごみの出し方や処理業者選びに失敗しないためにも、今回は産業廃棄物がどのように処理されているのかという点を中心に掘り下げてみましょう。
産業廃棄物の処理方法は法律に基づいて様々な規則を遵守する必要があるため、まずは法的な基礎知識を身に付けておく事が重要であると言えるでしょう。産業廃棄物の取り扱い方は全五章から成る「廃棄物処理法」という法律で定められています。
##廃棄物処理法ってなに?
廃棄物処理法とは正式名称を「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」と言い、一般廃棄物および産業廃棄物の排出・処理について様々な規定を設けた法律として1970年に公布されました。当時の日本は高度経済成長期に突入しており、大量生産大量消費が当たり前の事だったのです。しかし大量のごみ処理による公害問題が表面化した事から、当時の「清掃法」を全面的に改正して廃棄物処理法が制定されました。廃棄物処理法は廃棄物の排出抑制・処理の適正化によって生活環境の保全および公衆衛生の向上を図る事を目的としています。廃棄物処理法は時代の流れに即して適宜改正が施されているという点にも注意しておきましょう。
##排出事業者は産業廃棄物を適正に処理する義務がある
廃棄物処理法の第三条では「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を、自らの責任において適正に処理しなければならない」と定めています。一般的に廃棄物の処理は業者に義務があると思われがちですが、排出者にも同様に義務があるのです。これを「排出事業者責任」と呼びます。廃棄物の取り扱いは専門業者に業務委託する事が可能ですが、委託先は各自治体から認可を受けている業者である必要があるので注意してください。また、廃棄物の運搬・処理をそれぞれ異なる業者に委託する必要があります。これは産業廃棄物の運搬と処理では必要となる資格が異なるためです。
産業廃棄物の排出者が運搬・処理を外部に委託するにあたっては、厳密な委託基準が設けられています。自社で廃棄物を保管しておく必要がある場合には、別途定められている保管基準を満たさなければならないので覚えておきましょう。排出者はこうした基準をクリアした上で運搬および処理業者と事前に契約を結び、産業廃棄物の引き渡しが可能になるのです。排出者は廃棄物の引き渡し時に委託先業者との間で産業廃棄物管理票(マニフェスト)と交付し、お互いが5年間保存する事が義務付けられています。このマニフェストは廃棄物処理の流れを明確にするために設けられた制度であり、万が一不法投棄などが発生した場合は重要な手がかりとして運用されるものです。
産業廃棄物の処理を業者に委託するにあたって、実際にどのようなプロセスが踏まれているのか気になるという人も多いでしょう。産業廃棄物の処理プロセスは大きく分けて「分別・保管」「収集・運搬(積替)」「中間処理」「再生処理・最終処分」の4ステップです。以下ではそれぞれの工程について詳しく見ていきます。
##ステップ1 分別・保管
産業廃棄物の分別・保管は排出者側で行う事になります。一般的な家庭ごみは「燃やすごみ」「燃えないごみ」「資源ごみ」といったように処理方法ごとに分別している自治体も多いですが、産業廃棄物は「紙くず」「がれき類」「廃プラスチック類」などのように廃棄物の種類で分別するので注意が必要です。複数の素材が混ざり合って明確な分別が困難な場合は「混合廃棄物」として扱います。
##ステップ2 収集・運搬
事業によって発生した産業廃棄物の運搬に関しては、排出者が自力で運搬する分には特別な許可を必要としません。しかしそのすべての労力やコストを自社で賄うのは現実的ではないため、廃棄物の運搬は外部に委託するのが一般的です。一般・産業を問わず他者から廃棄物運搬の委託を受けるにあたっては、各都道府県からの認可が必要になります。都道府県をまたぐような収集ルートになる場合には、それぞれの自治体で認可を受けている必要があるので留意しておきましょう。
##ステップ3 中間処理
運搬された廃棄物はいきなり本格的な処理を施すのではなく、その80%がまずは中間処理という工程にかけられます。中間処理は専用の施設で行われ、受け入れ確認から計量・展開検査・粗選別などが行われるのです。種別ごとに選別された廃棄物は必要に応じて焼却や圧縮が施され、最終処理場行きのトラックに積み込まれます。運び込まれた廃棄物の量によっては中間処理施設で一時的に保管するケースも少なくありません。
##ステップ4 再生処理・最終処分
産業廃棄物の最終的な処理には「再生(リサイクル)」と「埋め立て」の2パターンが存在します。再生方法は大きく分けて廃棄物の原材料を利用する「マテリアルリサイクル」、加工による化学反応を利用する「ケミカルリサイクル」、焼却時の熱エネルギーを利用する「サーマルリサイクル」の3つです。埋め立て方法は地方公共団体がメインで管理している海面埋め立て、主に民間団体が管理している内陸埋め立てに二分されます。SDGsをはじめとする地球環境保護の観点から、近年ではリサイクルの積極的活用が主流です。
日本では高度経済成長期を経て様々な公害問題が表面化しました。地球温暖化や埋め立て地建設の限界など、地球環境に対する世間的な関心も年々高まって来ています。もしも廃棄物の管理・処理が正しく行われない状態が続けば、生態系への悪影響や環境破壊に繋がっていく事でしょう。産業廃棄物の適正な処理は排出者や運搬処理業者だけの問題ではなく、すべての生物の安全な生活に関わる重要な取り組みなのです。厳正な管理・処理体制を保ち続けるためには、廃棄物の排出者と運搬処理業者がそれぞれ責任を負って相互に監視し合う事が重要になります。
産業廃棄物は年々デリケートな扱いや厳正な管理が求められるようになっているため、排出者としても正しい知識を持っておく事が重要です。廃棄物処理法をはじめとする法律的な根拠や保管基準・委託基準などをしっかりと把握し、安心安全な運用を心がけていきましょう。運搬処理を外部に委託する場合には、正しい処理工程や処理施設を持っている自治体認可済みの業者を選ぶようにしてください。