事業系ゴミ・産業廃棄物に関する品目・用語・覚えておくべきキーワード集
繊維くずは産業廃棄物の分類では「排出する業種が限定されるもの」に分類されていますが、具体的にどのようなものかよくわからないと思います。今回は繊維くずとはどのようなものなのか、どのようなときに産業廃棄物となるのかを説明していきます。
繊維くずとは、木綿くずや羊毛くず、天然繊維くず、布くずなど繊維でできたゴミのことで、洋服や織維製品の製造業を除く繊維工業や建設業で事業活動によって排出された場合またはPCB(ポリ塩化ビフェニル※)が染み込んでいる場合は産業廃棄物として扱われます。特にPCBが含まれる場合には、特別管理産業廃棄物となりますので、一層の注意が必要になります。
繊維くずについては、清掃に関する法律施行令第2条3号で次のように定められています。
「繊維くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)に係るもの及びポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)」
これによると、繊維くずが産業廃棄物として扱われる産業は、建設業(工作物の新築、改築または除去の際に発生したもの)、洋服や織維製品の製造業を除く繊維工業となります。これ以外の産業から排出された繊維くずは、産業廃棄物ではなく、事業系一般廃棄物として扱われます。
化学的に合成された有機塩素化合物のことで、燃えにくく絶縁性が高いという特徴があるため、熱交換器の熱媒体、電気機器の絶縁油、感圧複写紙などに幅広く利用されていました。しかし、PCBは簡単に分解できず、発がん性があるなど、人体および生活環境に悪影響を及ぼすおそれがあることから、昭和47年(1972年)には製造が禁止されています。
繊維くずは、繊維工場(紡績・織布工場)から排出される糸くず、木綿くず、羊毛くず、麻くず、レーヨンくずなど、建築現場から排出されるロープ、布くず、畳、じゅうたんなどが具体例です。繊維くずという名前から、糸状の物を想像しがちですが、衣服も糸の集まりですので、繊維くずとなります。
繊維工場(紡績・織布工場)や建築現場では、アクリル繊維やナイロンなどの合成繊維も排出されますが、合成繊維に関しては、繊維くずではなく、「廃プラスチック類」に分類されますので、注意が必要です。合成繊維と天然繊維両方が含まれた物に関して、明確に分別して処分できない場合の分類方法は、各自治体に判断がゆだねられていますので、確認してみてください。
また、PCBが含まれるものに関しては、天然繊維、合成繊維関係なく特別管理産業廃棄物となりますので、十分注意が必要です。
「繊維くず」と「くず繊維」は同じような言葉ですが、別のものを指します。「繊維くず」とは、先にも述べたように、繊維工場などから排出された木綿くずや羊毛くず、天然繊維くず、布くずなど繊維でできたゴミのことを指します。一方、「くず繊維」とは、洋服やその他の織維製品の縫製工場など衣料の生産現場から排出される裁ち落としや端切れなどのことを指します。
「繊維くず」は産業廃棄物となりますが、「くず繊維」事業系一般廃棄物となり、処理方法が異なります。
繊維くずの処理方法としては、再資源化(リサイクル)が一般的です。リサイクルの方法としては、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクルに分けることができます。
衣類を裁断して、汚れをふき取る際に使用するウエスとして再利用したり、繊維くずを反毛機械でほぐし、衣類などの原料となる反毛として再利用したりできます。また、繊維くずの中でも、植物である天然のイグサからできた畳は、適切に処理して動物の敷きわらとして再利用されます。
繊維くずをRFP化してRFP燃料と呼ばれる固形燃料として再利用することができます。
ほかにも、衣服としてそのまま再利用できる場合には、クリーニングして中古衣類として再利用されます。リサイクルできない場合には、破砕・焼却をして埋め立てるなど管理型最終処分場(埋め立て後の廃棄物が雨水などを通して周辺環境に悪影響を与えないよう対策が施され、厳密に管理された処分施設)で最終処分されます。
繊維くずは、他の産業廃棄物に比べて排出量は少なく、リサイクル方法も豊富ですが、その排出量は増加傾向にあり、最終処分率が高いという問題があります。また、クロスなどとしてリサイクルした場合でも、クロスなどとして使用した後には、処分しなければならないという問題もあります。
今回は、産業廃棄物としての繊維くずについて紹介してきました。繊維くずに関しては、紙くずや木くずとは違い、指定されている産業が絞られており、分類しやすいとは思います。しかし、天然繊維と合成繊維の違いを区別したりなど困難なこともありますので、きちんと確認するようにしてください。