事業系ゴミ・産業廃棄物に関する品目・用語・覚えておくべきキーワード集
鉱さいは、鉱物を高温で溶解した時に発生する不純物です。産業廃棄物にあたるので、廃棄物処理法に従って処分する必要があります。
今回は、鉱さいの特徴や処分方法、処分費用を詳しく解説していきます。また、鉱さいの取り扱いに関する注意点についても説明します。
鉱さい(鉱滓)は、ニッケルや鉄、クロムなどを精錬する際に生じる溶融物質です。
具体例として、以下のようなものがあります。
含有物の量が廃棄物処理法で定められた判定基準を超えるものは、特別管理廃棄物として取り扱わなければなりません。
さらに、その中でも有害物質である水銀、カドミウム、鉛などを含むものは、特定有害産業廃棄物に該当します。
鉱さいの種類は、大きく3つに分類されます。
鉱さいは、鉄鋼業、非鉄金属製造業、輸送用機械器具製造業などの製造業から排出されることが多いです。各業種で排出される鉱さいの種類は以下の通りです。
排出業種 | 種類 |
鉄鋼業 | 高炉スラグ、製鋼スラグ、鋳物廃砂 |
非鉄金属製造業 | アルミドロス、銅スラグ、鋳物廃砂 |
輸送用機械器具製造業 | 鋳物廃砂 |
製造業(窯業・土石製品、ゴム製品、 金属製品など) | 鋳物廃砂、溶解カス(ノロ) |
鉱さいは産業廃棄物であるため、廃棄する際は産業廃棄物処理業の許可を持っている業者と契約、運搬・処分を委託する必要があります。
対応可能な業者は、自治体のホームページや産業廃棄物処理事業振興財団が運営する「さんぱいくん」で調べることができます。
回収された鉱さいのうち、再利用が難しいものは埋立処分されます。有害物質を含まない鉱さいは「管理型最終処分場」、有害物質を含む鉱物性廃棄物は「遮断型最終処分場」に埋め立てられます。
鉱さいの処分費用は地域や処理業者によって異なりますが、一般的には1kgあたり10円〜80円程度が相場とされています。
上記の金額は、あくまでも目安になります。料金の詳細は、業者に直接問い合わせましょう。委託する業者を選ぶ際は、複数の業者から見積もりをもらい、比較することをおすすめします。
鉱さいは、再利用率が高い産業廃棄物の1つです。環境省の調査では、令和3年度に排出された鉱さいの93.8%が再利用されています。
鉱さいのリサイクル方法は以下5つが挙げられます。
スラグ、ばいじん、燃え殻などの鉱さいは、コンクリート製造のためのセメント原料として、再利用されます。
セメントを製造する際は、主に粘土や珪石などの天然原料が使用されますが、鉱さいはこれらの天然原料の代替素材として活用されています。
鉱さいの中には、マグネシウムや鉄、ケイ素など肥料となり得る成分が含まれているものがあります。これらは、けい酸石灰肥料(ケイカル)としてリサイクルが可能です。中でも、高炉スラグから作られる鉱さいけい酸質肥料は、農業で幅広く活用されています。
また、アルカリ成分を含むため、土壌の酸性の中和に用いられたり、鉄分不足の土壌に鉄分を補給させる目的で使用されることも多いです。
リサイクル工場で成分分析、異物除去、破砕されたものは、鋳物砂として利用することができます。鋳物砂は、金属加工の際に用いる鋳造型の素材になります。
コンクリートやアスファルトの路面の下に敷く路盤材として再利用できます。
路盤材は、強度や粒度の規格が設けられており、規格に合うものでないといけません。鉱さいの中でもスラグは、化学的に安定していて、重金属が溶け出しにくい特徴もあるため、路盤材に適している物質といえます。
磯焼けは、海岸に生息する海藻類が死滅して、生態系のバランスが崩れる現象のことをいいます。磯焼けが起きると、周辺に生息する生物が減少するため、生態系や漁業に影響を及ぼします。
鉄分を含む鉱さい(製鉄スラグ)を海に入れることで、海水に鉄分を補給させ、磯焼けの原因である鉄分不足を改善します。
鉱さいは、含有物の性質によっては生活環境に悪影響を及ぼす場合があります。
鉱さいには、鉛やカドミウムなどの有害物質が含まれている場合があります。適切な分別・処理がされなかった場合、水に触れることで有害物質が溶出し、土壌汚染や水質汚染を引き起こす可能性があります。
鉱さいに含まれる重金属を長期間摂取すると、以下のような健康被害を引き起こす可能性があります。
処分費用の高騰などが原因で、排出事業者や処理業者が不法投棄を行うことも珍しくありません。
鉱さいを屋外に放置したり、土に埋めてしまうと、水に触れることで鉱さいに含まれる有害物質が流出し、生活環境に被害を及ぼすことがあります。
不法投棄をした場合は、5年以下の懲役または1,000万円の罰金、もしくはその両方が科されます。
今回は、鉱さいの特徴や処分方法、処分費用について説明しました。
鉱さいは、燃え殻やばいじんと比べるとリサイクル方法が多く、再利用率が高い産業廃棄物です。効率的に再資源化を行うためにも、正しい処分方法を把握しておきましょう。
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