事業系ゴミ・産業廃棄物に関する品目・用語・覚えておくべきキーワード集
産業廃棄物の一種であるPCB廃棄物は、法律によって期限内の処分や保管に関する事項が定められています。今回は、PCB廃棄物の見分け方や処理方法、処分費用などについて解説していきます。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、電気機器の絶縁油や熱媒体、塗料として使用されていた合成油です。水に溶けにくい、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高い、耐薬品性に優れているなどの性質があります。
PCBを体内に取り込むと、目やにや皮膚の黒ずみ、座瘡様皮疹、爪の変形、全身倦怠感、食欲不振などの健康被害をもたらします。
PCBが体に有害と認知されるきっかけとなったのが、1968年に起こったカネミ油症事件です。米ぬか油の製造過程において、PCBが商品に混入し、摂取した人や胎児に症状があらわれました。患者数は13,000人にも上り、世界的にも注目を集めました。
日本ではカネミ油症事件を機に、1972年に生産と使用の中止、1975年以降PCBの製造・輸入が原則禁止となっています。
そして、2001年にストックホルム条約(POPs条約)において、PCBの製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、廃棄物の適正処理などの規定が定められました。
PCB廃棄物は、PCB濃度によって高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分類されます。
高濃度PCB廃棄物は、PCB濃度が0.5%(=5000ppm)を超えるものが該当します。代表的なものだと、高圧変圧器、高圧コンデンサー、安定器が該当します。
PCB濃度が0.5%(=5000ppm)以下のものは、低濃度PCB廃棄物に該当します。
変圧器・コンデンサーを例に、PCB廃棄物の見分け方を解説します。
昭和28年(1953年)から昭和47年(1972年)に国内で製造されたものは、絶縁油にPCBが使われている可能性があります。これらは、高濃度PCB廃棄物に該当し、機器に取り付けられた銘板で判別することができます。
測定例から1990年頃までに国内メーカーが製造した電気機器には、PCB汚染の可能性があると考えられています。PCBに汚染された絶縁油を含むものは、低濃度PCB廃棄物に該当します。
取り付けられた銘板に記載された製造年とメンテナンスの実施履歴等をチェックすることで、PCB汚染の可能性を確認できます。自身で判断が難しい場合は、メーカーに問い合わせるか、日本電機工業会のホームページを確認してください。
高濃度PCB廃棄物は、PCB 特措法によって処分期間内に処分を行うことが義務付けられています。
まずは、保管・処分の状況について都道府県知事へ届出と、JESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)への登録を行います。その後、PCB廃棄物の収集運搬業許可を取得している業者に運搬を委託し、JESCOの事業所で処分が行われます。
低濃度PCB廃棄物は、民間の処理事業者によって処理が行われます。無害化処理認定事業者もしくは特別管理産業廃棄物の処分業許可を得た事業者に運搬・処分を委託する必要があります。
高濃度PCB廃棄物の処理期限は、令和5年(2023年)3月31日までとなっており、既に終了しています。低濃度PCB廃棄物は、令和9年(2027年)3月31日までの処分が必要です。
期間内に処理をしなかった場合は、罰則・罰金が科せられます。期限が近づくと、業者への委託や手続きに時間がかかるため、早めに対応するようにしましょう。
高濃度PCB廃棄物の場合は、1台ごとの重量によって料金が変動します。3kg以上~10kg未満の機器は、1台当たりの総重量(kg)×30,800円が処理料金になります。10kg以上〜15kg以下の機器は、442,000円の費用が発生します。
低濃度PCBに汚染された疑いのある変圧器の分析や高効率変圧器への交換を行うことで、補助金を申請できる制度もあります。詳細は、産業廃棄物処理事業振興財団のホームページで確認してください。
Q. PCB廃棄物の具体例は?
PCB廃棄物の具体例には、絶縁油にPCBが使用された変圧器やコンデンサ、安定器などが該当します。
Q. PCB廃棄物とPCB汚染物の違いは何ですか?
PCB廃棄物は、絶縁油にPCBが使用された電気機器が該当します。一方、PCB汚染物は、微量のPCBを含むものやPCBが付着した廃棄物を指します。
Q. PCBに触ったらどうなる?
PCBは有害な化学物質であり、皮膚への接触や吸入によって様々な症状を引き起こします。PCBに触れてしまうと、吹出物や色素沈着といった皮膚症状が発生する恐れがあります。万が一触れた場合は、速やかに洗浄し、専門家に相談してください。
この記事では、PCBの特性や判別方法、処理方法について解説しました。
PCBを含む電気機器は、早急かつ適切に処分することが求められています。PCB廃棄物の取り扱いには十分注意し、対応を進めましょう。
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