事業系ゴミ・産業廃棄物に関する品目・用語・覚えておくべきキーワード集
産業廃棄物の中で動物から発生する廃棄物は分類が複雑でわかりづらいものです。同じ廃棄物でも、発生する事業活動の種類によって変わってきます。
そこで今回は、動物系の産業廃棄物の中で「動物系固形不要物」について詳しく解説していきます。処理方法や再利用の方法など、わかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
動物系固形不要物とは、産業廃棄物の一つで、畜業や食鳥処理場から発生した皮、骨、羽などの固形物のことを意味します。動物系固形不要物は、畜業や食鳥処理業で発生した廃棄物のみを対象としています。
物理的性状などの見た目は同じであっても、処理手法や処理ルートに違いがあるため、畜業や食鳥処理業以外の事業活動で発生した場合は「動植物性残さ」として扱われます。
このように同じ動物から発生した産業廃棄物でも分類が異なるので、処分についてはよく確認して行いましょう。
産業廃棄物はその種類び多さから処理業許可・処理施設というように産業廃棄物の処理には、さまざまな関係業者がつながっています。
そんな産業廃棄物の動物系固形不要物の処理方法についてですが、焼却処理を行い焼却灰を埋め立てる方法と、焼却灰をセメント原料や路盤材などに再利用する方法があります。
動物系固形不要物は、当初19種類しかなかった産業廃棄物の品目の中で20品目として新たに追加された産業廃棄物です。
なぜかというと、畜業や食鳥処理業で発生した肉や骨は関係業者が買い取り肉骨粉としてそのすべてを再利用していたため、廃棄物の排出がありませんでした。
しかし、2001年に起きた牛海綿状脳症などの影響からリサイクルは禁止されました。その結果、新規に産業廃棄物を設定する必要が出て、新たな産業廃棄物となったのが、この動物系固形不要物です。
牛海綿状脳症(BSE)とは、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染することで牛の脳組織の異常が原因となり、さまざまな症状を発症してしまい、死にいたる牛の病気です。
発症の主な原因として、BSEに感染してしまった牛の脳、脊髄などを原料に使ったエサを他の牛に与えられたことが原因ではないかといわれ、イギリスなどを中心に感染が広がりました。日本でも感染牛が確認されています。
牛海綿状脳症が問題となる前は、と畜場などから発生する牛の骨は、脂肪を溶かし精製することで油脂につくりかえるレンダリング業者に買い取られ、廃棄物として処理されておらず、排出実態がないものとして処理されていました。
日本においては、2001年9月に千葉県ではじめて牛海綿状脳症の牛が確認されました。
農林水産省は、飼料用、肥料用の肉骨粉の製造や販売を一時停止を要請し、環境省については、レンダリング業者に対して不必要な量の肉骨粉などを早急に処分を行っていくことを要請しました。
厚生労働省により、と畜場から排出される牛の脳や脊髄の焼却を指導するなどの通知が出されたため、畜業や食鳥処理業などから新たな種類の廃棄物が発生することになってしまいました。
売れ残り製品の肉骨粉は一般廃棄物であることを明確にすること。
・畜業や食鳥処理場から発生する脳や脊髄などの廃棄物を産業廃棄物とする政令改正
・肉骨粉の円滑で安全な処理やリサイクル体制を確保し、産業廃棄物のリサイクルを行うセメント事業者へのリサイクル活用を進めていくため、再生利用認定制度の適用を実施しました。
他にも多くの対策がとられたため、日本では2003年以降に産まれた牛からは、牛海綿状脳症の発症は起きていません。
動物系固形不要物は、基本的に焼却灰をセメント原料や路盤材などにリサイクルするため、排出量が非常に少ない産業廃棄物の一つです。
その処理状況ですが、再生利用が約8割、減量化が約2割、残りは最終処分、という割合です。数値でみてもリサイクル率が高めなのが「動物系固形不要物」です。
マテリアルリサイクルとは、廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法です。
マテリアルリサイクルは、同じ物にリサイクルされることもあれば、異なる製品にリサイクルされることもあります。マテリアルリサイクルの具体例ですが
・使用済みの缶を破砕、固形化を行い、缶製造の原材料として再利用できる。
・金属くずなどを溶かし、インゴットなどに再生されます。
・木くずを破砕してチップ化する
マテリアルリサイクルは資源の流通に貢献しており、サステナビリティの高いリサイクル方法です。
アップサイクルとは廃棄物に新たな付加価値をもたせることを意味します。産業廃棄物などの不要なものを再利用して価値の高い製品をつくりだすことが、アップサイクルの考え方です。アップサイクルの考え方はSDGsの持続可能な開発目標に沿った考え方です。
今回は、動物系固形不要物について解説していきました。当初19種類であった産業廃棄物の中で、20種類目として追加された動物系固形不要物。
さまざまな問題を解決するために、新たに追加された産業廃棄物ですが、適正な処理や再利用を積極的に進めていくことが必要です。適切な取り扱いを実施し、BSEなどの問題が発生しないようにしていきましょう。